業務アプリの範囲をどう決めるか。回収期間を自社で計算する方法
この記事の目次(10項目)
業務アプリを作るとき、最初から対象業務を広げすぎると、開発費も検証期間も大きくなり、効果が出るまでの時間も延びます。範囲を小さく決めて先に動く形を作り、効果を確認してから広げる進め方のほうが、投資額に対する回収の見通しを早く立てられます。この記事では、範囲を決めるときの考え方と、回収期間を自社の数字で計算する式を、仮の数字の例とともに示します。
業務アプリを小さく作る、とはどういうことか
小さく作るとは、機能を減らすことではなく、対象にする業務の範囲を1つの工程、1つの部署に絞ることです。例えば「受注から出荷までの業務アプリ」を作る場合、最初から受注・在庫・出荷・請求のすべてを対象にするのではなく、まず受注入力の1工程だけを対象にし、効果を確認してから在庫や出荷に広げます。
範囲を決めるときに最初に外すもの
範囲を決めるときは、以下を最初の対象から外すかどうかを検討します。
- 発生頻度が低い例外処理(月に数件しか発生しない特殊なケース)
- 複数部署の承認を必要とする工程(承認経路の調整に時間がかかる)
- 既存システムとの連携が必要な部分(連携先の仕様確認に時間がかかる)
これらを最初の範囲から外すと、開発費と検証期間を抑えやすくなります。外した部分は、最初の範囲で効果を確認したあとに、次の対象として検討します。
対象業務を選ぶときの優先順位
複数の業務が自動化の候補になっている場合、次の3つの観点で優先順位をつけます。
- 発生件数が多い業務ほど、1件あたりの削減効果が小さくても、合計の削減額は大きくなります
- 作業者が複数人いる業務ほど、削減した時間を人数分合計できます
- ミスや再作業が発生しやすい業務ほど、作業時間の削減に加えてミスの削減額も積み上がります
これらの観点で候補を並べ、削減額が大きくなりそうな業務から対象にすると、回収期間を短くしやすくなります。
回収期間を自社で計算する式

回収期間は、開発費を月あたりの削減額で割って計算します。
回収期間(月)= 開発費 ÷ 月あたりの削減額
月あたりの削減額は、作業時間の削減と、ミスや再作業の削減の両方を含めて計算します。
月あたりの削減額 =(削減した作業時間 × 時給換算額)+(ミス・再作業の削減額)
以下は、仮の数字を使った計算例です。実際の数字ではなく、計算の仕方を示すための例です。
仮に、開発費を100万円、1日あたりの作業削減を1時間、時給換算額を2,000円、稼働日数を月20日とします。月あたりの削減額は「1時間×2,000円×20日=4万円」です。回収期間は「100万円÷4万円=25か月」になります。
仮に、同じ開発費で、1日あたりの作業削減を3時間、時給換算額を3,000円、稼働日数を月22日とすると、月あたりの削減額は「3時間×3,000円×22日=19万8,000円」です。回収期間は「100万円÷19万8,000円で、約5.1か月」になります。
この2つの仮の例からも分かるように、回収期間は開発費だけでなく、削減される作業時間と件数によって大きく変わります。対象業務を選ぶときは、削減できる時間と件数が大きい工程を優先すると、回収期間を短くしやすくなります。2つの仮の例を表にまとめると、以下のようになります。
| 項目 | 仮の例A | 仮の例B |
|---|---|---|
| 開発費 | 100万円 | 100万円 |
| 1日あたりの作業削減 | 1時間 | 3時間 |
| 時給換算額 | 2,000円 | 3,000円 |
| 稼働日数(月) | 20日 | 22日 |
| 月あたりの削減額 | 4万円 | 19万8,000円 |
| 回収期間 | 25か月 | 約5.1か月 |
ランニングコストを含めた回収期間の例

仕組みを運用し続けるには、サーバーやAPIの利用料などのランニングコストがかかる場合があります。回収期間を計算する際は、月あたりの削減額からランニングコストを差し引きます。
仮に、月あたりの削減額が19万8,000円、ランニングコストが月3万円だとすると、実質の月あたりの削減額は「19万8,000円−3万円=16万8,000円」です。開発費が100万円であれば、回収期間は「100万円÷16万8,000円で、約6か月」になります。ランニングコストを差し引かずに計算すると、回収期間を短く見積もってしまうため、ランニングコストが発生する仕組みでは必ず差し引いて計算します。
削減額の見積りで甘くなりやすい点
削減額を見積もるときに、作業時間の削減だけを数えて、ミスや再作業の削減を見落とすことがあります。入力ミスによる再出荷、二重入力の手直し、確認のための電話対応など、作業時間には表れにくいコストも、月あたりの削減額に含めて計算します。また、運用開始後の保守費用やランニングコストを差し引かずに回収期間を計算すると、実際より短い期間が出てしまうため、ランニングコストがある場合は月あたりの削減額から差し引きます。
回収期間の目標値をどう決めるか
回収期間が何か月であれば投資として妥当かという判断基準は、企業や設備投資の方針によって異なります。社内で明確な基準がない場合は、他の設備投資や既存システムの更新サイクルと比較し、同程度かそれより短い回収期間を目安にすると判断しやすくなります。回収期間の計算結果が目安より長い場合は、対象業務の範囲を見直すか、削減額の見積りに含めていない項目(ミスの削減など)がないかを再確認します。
削減額を測る期間の決め方
計算に使う削減額は、導入前の見積り値ではなく、導入後の実測値に置き換えて検証します。導入直後の1〜2週間は、担当者が操作に慣れていないため、本来の削減効果より少なく出ることがあります。削減額を測る期間は、操作に慣れたあとの1か月を基準にすると、見積り時の仮の数字と実際の数字のズレを把握しやすくなります。
実測した削減額が見積り時の仮の数字より小さい場合は、回収期間も当初の計算より延びます。延びた回収期間を踏まえて、次に範囲を広げるかどうかを判断します。実測の記録は、次に別の業務を対象にするときの見積り精度を上げる材料にもなります。
範囲を広げる前に確認すること
最初の範囲で効果を確認できたら、次に広げる範囲を決める前に、削減額の計算をもう一度行います。最初の範囲と同じ削減率が、広げる範囲でも同じように出るとは限りません。広げる範囲ごとに、削減できる作業時間と件数を見積もり直してから、次の開発費を検討します。
あわせて読みたい記事として、「開発の見積額に幅が出る理由。要件のどこで工数が膨らむか」と「受注〜出荷のどこから自動化するか。費用対効果が高い着手順序の決め方」も参考にしてください。
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