受注〜出荷のどこから自動化するか。費用対効果が高い着手順序の決め方
この記事の目次(9項目)
受注から出荷までの業務を一度に自動化しようとすると、費用も検証期間もかさみます。先に手を付けるべきは、入力ルールが決まっていて例外が少ない工程です。この記事では受注〜出荷の業務を工程ごとに分解し、費用の割に効果が出やすい着手順序と、着手前に自社で確認しておきたい指標を整理します。判断の難しい工程は、あとに回して構いません。
受注〜出荷は一つの工程ではない
受注〜出荷という言葉でまとめて語られがちですが、実際は受注データの受け取り、在庫確認、出荷指示書の作成、ピッキング、検品、梱包、発送、実績の記録という複数の工程に分かれています。工程ごとに入力ルールの明確さ、例外の発生頻度、関わる人数が異なります。自動化の検討は、この工程単位で行うのが基本です。まとめて「受注〜出荷システムを作ってほしい」と発注すると、本来後回しでよい工程まで仕様に含まれ、費用と開発期間が膨らみます。
例えば、受注〜出荷をまとめて1つのシステムとして発注すると、要件定義の段階で各工程の担当者から要望が出され、当初想定していなかった例外処理まで仕様に含まれていくことがあります。結果として、最初に自動化すべきだった工程の実装が後回しになり、全体の完成を待つ間は何も変わらない期間が続きます。
自動化しやすい工程の見分け方
自動化しやすい工程には共通点があります。入力のルールが決まっている、判断に人の経験や交渉を必要としない、例外の発生が少ない、という3点です。たとえばモールで受けた注文を基幹システムやExcelに転記する作業は、項目の対応関係が決まっているため自動化に向いています。一方、返品対応や配送会社との特殊な調整が必要な工程は、判断基準が人の経験に残っている場合が多く、自動化の前にルールを言葉にする作業が必要です。
例えば、取引先からの注文をFAXやメールで受けている場合、文章の書き方が取引先ごとに異なることが多く、自動化の前に入力ルールを統一する作業が発生します。この統一作業が完了してから自動化に着手する方が、結果として早く効果が出ます。
費用の割に効きやすい工程

以下は、着手順序の目安です。優先度が高いほど、自動化の費用に対して効果が出やすい工程になります。
| 優先度 | 工程 | 自動化しやすい理由 | 自社で確認したい指標 |
|---|---|---|---|
| 1 | 受注データの転記(モールから基幹システムやExcelへ) | 入力項目の対応関係が決まっており、例外が少ない | 転記にかけている時間(分/件、件数/日) |
| 2 | 出荷指示書・ピッキングリストの作成 | 在庫データと受注データをつなぐだけで成立する | 作成からピッキング開始までの時間 |
| 3 | 在庫数の重複確認 | モールごとの在庫を人が見比べている場合、照合ルールが明確 | 欠品による出荷遅延の件数 |
| 4 | 出荷実績の記録・反映 | 発送確定のタイミングが決まっている | 実績反映までのタイムラグ |
| 5 | 例外対応(返品、急な欠品、特殊配送の手配) | 判断基準が人の経験に依存している | 後回し。分岐ルールを洗い出してから検討する |
例えば受注件数が1日300件、転記作業に1件あたり2分かかっているとすると、1日あたり600分、月20日稼働で200時間になります。この時間のうち何割を自動化で減らせそうかを、まず自社の数字で見積もることから始めます。
後回しにしてよい工程の見分け方
逆に、優先度を下げてよい工程もあります。発生頻度が低く、対応のたびに条件が異なる例外処理です。返品の受け付け、取引先ごとに異なる特殊な出荷条件、配送会社との価格交渉はここに含まれます。これらを自動化の対象に含めると、分岐条件を洗い出す工程が増え、開発範囲が広がります。PTはこの種の工程を、最初のテーマからは外すべきだと考えます。先に自動化しやすい工程で成果を作り、例外対応は後から個別に検討する方が、費用に対して着実です。
温度帯や拠点が複数ある場合の順序の変え方
常温・冷蔵・冷凍の3温度帯を1拠点で運用している場合や、拠点が複数ある場合は、同じ工程でも自動化のしやすさが変わります。例えば冷凍帯のピッキングは防寒具を着用した作業になり、タブレットやハンディ端末の操作に時間がかかることがあります。この場合、受注データの転記のような画面上だけで完結する工程を先に自動化し、現場での操作が必要な工程は、端末の使い勝手を現場で確認したうえで着手順序を決めることをPTは勧めます。拠点が複数ある場合も同様に、まず1拠点で効果を確認してから他拠点に広げる方が、費用に対する判断を誤りにくくなります。
小さく始めて広げる進め方

最初の1工程を自動化したあと、次の工程へ広げる範囲も一度に決めてしまわないことが重要です。例えば受注データの転記を自動化した次に、出荷指示書の作成まで一気に対象を広げると、転記の自動化で得られた効果の検証が終わる前に、別の変更が重なってしまいます。1工程ごとに効果を確認し、問題が出ていないかを現場に確認したうえで、次の工程に進む順序をPTは勧めます。広げる速さよりも、各工程で現場が運用に慣れているかどうかを優先します。
着手前に社内でそろえておくこと
自動化の検討を始める前に、現状の業務フローを書き出しておくと、対象工程の選定が早くなります。必要なのは、各工程の担当者、使っているツール(Excel、モールの管理画面、基幹システムなど)、処理件数、処理にかかっている時間です。これらが整理されていれば、どの工程から着手すべきかの判断材料になります。数字が手元にない場合は、まず1週間分の処理時間を記録するところから始めても構いません。書き出す際は、Excelの1シートに工程名・担当者・ツール・件数・時間を一覧化するだけで十分です。細かい手順書を作る必要はなく、まず現状を一目で把握できる状態にすることを優先します。
1テーマずつ進める理由
受注〜出荷の工程をすべて洗い出したあとも、着手は1テーマに絞ることをPTは勧めます。複数工程を同時に変えると、どの変更が効果に結びついたのかが分からなくなり、次の判断材料が残りません。1つの工程で動く形を作り、効果を数字で確認したうえで、次の工程に広げる方が、費用に対する判断がしやすくなります。
例えば受注データの転記を自動化したことで、月あたりの転記時間が200時間から150時間に減ったとします(仮の数値です)。この50時間分の変化を記録しておけば、次にどの工程へ広げるかの判断材料になります。効果が数字で残っていないと、次の投資判断が感覚だけに頼ることになります。
あわせて読みたい記事として、「Excel出荷指示を、WMSを入れずにWebアプリへ置き換える手順」と「業務アプリの範囲をどう決めるか。回収期間を自社で計算する方法」も参考にしてください。
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