データと在庫

食品の賞味期限・ロット管理を、現場のタブレット運用だけで回す方法

この記事の目次(10項目)
  1. 現場で期限管理が崩れる理由
  2. タブレットに持たせる最小機能
  3. 先入れ先出しを仕組みで守る設計
  4. 期限の逆転出荷を防ぐチェックポイント
  5. ロットトレースの最低条件
  6. 現場の入力負担を減らす工夫
  7. 温度帯によって確認の優先度が変わる
  8. 期限・ロット・温度・HACCPで記録に残す項目
  9. 廃棄ロスとの関係
  10. PT に相談するなら

食品の賞味期限・ロット管理は、紙やExcelへの転記が遅れることで、先入れ先出しが崩れたり、古いロットが後から出荷される逆転出荷が起きたりします。この記事では、WMSのような大がかりなシステムを入れる前に、タブレットだけで期限・ロット管理を回すための最小機能と、先入れ先出しを仕組みで守るための設計を整理します。常温・冷蔵・冷凍のどの温度帯から着手すべきかの考え方も合わせて示します。

現場で期限管理が崩れる理由

期限管理が崩れる場面の多くは、入荷時の記録から出荷時の確認までの間に、転記という手作業が挟まっていることが原因です。入荷時に紙に書いたロット番号と賞味期限を、後でExcelに転記する運用では、転記のタイミングによって最新のロットがどれかが分からなくなります。出荷時に古いロットから出す判断を、担当者の記憶や棚の見た目だけに頼っている場合、先入れ先出しは徹底されません。

例えば、入荷から転記までに半日のタイムラグがあるとすると、その半日の間に別のロットが入荷し、棚の並び順と記録上の順序がずれることがあります(仮の例です)。このズレが積み重なると、記録上は正しく見えても、現場では古いロットが棚の奥に残り続けるという状態が生まれます。

タブレットに持たせる最小機能

タブレットで回す場合、最初から多機能にする必要はありません。最小限必要なのは、入荷時にロット番号・賞味期限・数量を入力する画面、ロケーションごとに在庫をロット単位で一覧表示する画面、出荷時にスキャンまたは選択でロットを確定する画面の3つです。バーコードやQRコードを入荷時に発行しておけば、出荷時の入力はスキャンだけで済み、転記の手間と入力ミスを同時に減らせます。

タブレットの台数と設置場所も事前に決めておく必要があります。入荷口と出荷口が離れている現場では、それぞれにタブレットを置かないと、確認のために移動する手間が発生し、結局紙に書いて後から転記するという元の運用に戻ってしまいます。

先入れ先出しを仕組みで守る設計

最も期限が近いロットをタブレットの画面の先頭に表示する先入れ先出しの並び

先入れ先出しを現場の判断に任せず、仕組みで守るには、ロケーション×賞味期限でロットを並べ、最も期限が近いロットをタブレットの画面の先頭に表示する設計が有効です。担当者が選ぶ前に古いロットが見える位置にあれば、判断の負担を減らせます。期限が近いロットには、画面上で色や記号で目立たせる表示を加えると、確認の精度が上がります。

新しいロットを棚入れする際にも、既存ロットより期限が早いか遅いかをタブレット側で判定し、並び順が崩れていないかを棚入れの時点で確認できるようにしておくと、出荷時になって初めて順序のズレに気づく事態を防げます。

期限の逆転出荷を防ぐチェックポイント

出荷時にスキャンしたロットの期限が在庫の中で最も古いものと一致しなければ、確定前に警告して理由を記録する流れ

逆転出荷を防ぐには、出荷時にスキャンしたロットの賞味期限が、同一商品の在庫の中で最も古いものと一致しているかを、タブレット側で確認する仕組みを入れます。一致していない場合は、確定前に警告を出し、理由(棚の奥から出した、特定の取引先向けの指定など)を記録させます。この記録が、後からロットの動きを追う際の材料にもなります。

ロットトレースの最低条件

ロットトレースとは、入荷したロットがどの出荷先に渡ったかを追える状態のことです。最低限、入荷ロット番号と出荷先・出荷日を紐づけて記録しておけば、ある入荷ロットに問題が見つかった際に、どの出荷先まで影響が及ぶかを絞り込めます。この紐づけが無いと、問題発生時に全出荷先への確認が必要になり、対応範囲が広がります。

例えば、ある入荷ロットに品質上の問題が見つかったとして、紐づけの記録があれば、そのロットを含む出荷先だけに連絡すれば済みます(仮の例です)。紐づけが無い場合は、同じ期間に出荷したすべての取引先に確認を取る必要が出てきて、対応にかかる時間も連絡先の数も大きく変わります。

現場の入力負担を減らす工夫

タブレット運用を定着させるには、入力項目を必要最小限に絞ることが欠かせません。以下は、項目を検討する際の整理の目安です。

入力場面最低限必要な項目省略を検討してよい項目
入荷時ロット番号、賞味期限、数量、ロケーション仕入先の詳細情報(マスタ側で管理できる場合)
棚入れ時ロケーション、ロット番号作業者コメント(運用で必要な場合のみ残す)
出荷時出荷先、ロット番号、数量出荷担当者の所感

温度帯によって確認の優先度が変わる

常温・冷蔵・冷凍の3温度帯を扱う場合、期限管理を優先的にタブレット化すべき温度帯は、賞味期限までの期間が短い商品が多い温度帯になります。例えば冷蔵の生鮮食品は賞味期限までの期間が常温の加工食品より短く、先入れ先出しの徹底が崩れたときの影響が早く出ます(仮の例です)。すべての温度帯を同時にタブレット化する体制が取れない場合は、期限までの期間が短い温度帯から優先して着手し、常温のように期限までの期間が長い商品は後回しにする判断も成り立ちます。冷凍帯は防寒具を着用した作業になるため、タブレットの操作性(手袋をしたままの入力が可能かなど)を現場で確認してから導入するとPTは勧めます。

期限・ロット・温度・HACCPで記録に残す項目

タブレットの入力項目は、2つの公的な基準から逆算して決めます。1つは厚生労働省の食品等事業者の記録の作成及び保存について(2003年)で、食品衛生法に基づき、流通の各段階で作成・保存に努める記録項目を示しています。もう1つは、2021年6月から原則すべての食品等事業者に完全施行されたHACCPに沿った衛生管理で、食品衛生法施行規則が衛生管理計画の作成と、実施状況の記録・保存を求めています。

場面記録する項目根拠・用途
入荷品名、仕入元の名称と所在地、ロットが確認できる情報、仕入年月日、仕入量厚生労働省の記録指針(卸売業者の仕入記録)
保管品名、所有者(荷主)の名称と所在地、受入年月日、受渡年月日、保管量、温度など保管時に確認した状態同指針(保管業者の記録)
出荷品名、出荷先の名称と所在地、ロットが確認できる情報、出荷年月日、出荷量同指針(卸売業者の販売記録)
期限ロットごとの賞味期限または消費期限先入れ先出しの並び順と逆転出荷チェックの判定
衛生管理温度確認、清掃、異常時の対応内容と日時、確認者施行規則(衛生管理の実施状況の記録)

表の入荷と出荷の行がそろえば、ロットトレースの「1つ前(仕入元)と1つ後(出荷先)」が追えます。荷主から預かる倉庫であれば、所有者と受入・受渡の日付を保管の行に必ず持たせます。

保存期間について、施行規則は「取り扱う食品が使用され、又は消費されるまでの期間を踏まえ、合理的に設定すること」としています。記録指針は、流通実態(消費期限・賞味期限)に応じて設定することを基本とし、設定が難しい場合の目安として、流通段階では販売後1〜3年を示しています。PTはタブレットのデータを、扱う商品のうち最も賞味期限が長いものを基準に保存期間を決め、その期間内は現場担当者が削除・上書きできない設定にします。

温度帯によって、記録の重さも変わります。施行規則は、食品の貯蔵・運搬のみを行う営業者の計画作成と記録を「必要に応じて」に緩めていますが、食品の冷凍・冷蔵業はこの緩和の対象外です。冷蔵・冷凍品を預かる現場では、温度の記録を入荷・保管・出荷の各画面に組み込む前提で設計します。

廃棄ロスとの関係

先入れ先出しが仕組みで守られると、期限切れによる廃棄が減る可能性があります。古いロットが棚の奥に残り続けて期限切れになる、という事象が起きにくくなるためです。ただし、廃棄ロスには先入れ先出し以外の要因(発注量と販売量のズレ、季節要因など)も関わるため、タブレット導入だけで廃棄ロスがどの程度減るかは、自社の廃棄記録を導入前後で比較して確認する必要があります。この記事では廃棄ロスの削減量を断定せず、確認すべき記録項目として廃棄理由・廃棄数量・廃棄時のロット番号を残しておくことを勧めます。これらの記録があれば、導入後の効果を自社の数字で検証できます。

あわせて読みたい記事として、「冷凍・冷蔵の温度ログを自動記録し、監査資料まで出す方法」と「在庫差異の原因をAIに探らせる前に、現場でそろえておくべきデータ項目」も参考にしてください。

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