冷凍・冷蔵の温度ログを自動記録し、監査資料まで出す方法
この記事の目次(13項目)
冷蔵5℃帯・冷凍-20℃帯の温度は、手書きや目視での記録が今も多く残っています。記録そのものは義務として続けていても、監査や取引先への提出のたびに、台帳を遡って表を作り直す作業が発生します。温度ログを自動記録に切り替え、監査資料まで自動で出す仕組みを作ると、この作り直しの作業がなくなります。
手書き・目視の温度記録の限界
温度計を見て台帳に書く運用では、記録の頻度が「人が見に行ける頻度」に限定されます。深夜や早朝の時間帯、担当者が別の作業に追われている時間帯は、記録が抜けやすくなります。また、台帳に書かれた数値が実際の温度と異なっていても、後から検証する手段がありません。
自動記録に切り替えると何が変わるか
センサーで温度を一定間隔で測定し、記録をシステムに自動で保存する仕組みに切り替えると、記録の抜けがなくなり、記録の頻度を人の巡回に依存しない設定にできます。異常な温度を検知した時刻と、その後の対応時刻も記録に残るため、後から経緯を説明する資料としても使えます。
冷蔵5℃帯・冷凍-20℃帯でセンサーの置き方が変わる点
冷蔵5℃帯は庫内の温度差が比較的小さく、出入口付近と庫内中央の差を確認する目的でセンサーを配置します。冷凍-20℃帯は霜の付着や開閉による温度変化が大きいため、センサーの設置位置と、異常と判断する温度のしきい値を、庫内のレイアウトに合わせて個別に決める必要があります。どちらの温度帯でも、センサーの校正(実際の温度との誤差確認)を定期的に行う運用を組み込みます。
監査資料・取引先提出資料を自動で出す仕組み

記録したデータを、監査や取引先提出の書式にそのまま出力できるようにしておくと、提出のたびに表を作り直す作業がなくなります。出力する資料には、対象期間の温度推移、異常が発生した時刻と対応内容、センサーの校正記録を含めておくと、提出先からの追加質問にもその場で答えやすくなります。
監査資料に含めておきたい項目
自動記録から出力する資料に、何を含めるかを整理すると、提出先からの追加質問を減らせます。
| 含める項目 | 記録のソース | 提出先から聞かれやすい点 |
|---|---|---|
| 対象期間の温度推移 | センサーの自動記録 | 設定したしきい値を超えた時間帯の有無 |
| 異常発生時刻と対応内容 | アラート通知・担当者の入力 | 対応までにかかった時間 |
| センサーの校正記録 | 定期校正の実施記録 | 最終校正日と誤差の範囲 |
| 通信が切れた時間帯 | システムの通信ログ | 欠落時間帯の有無とその間の対応 |
異常検知とアラートの設計
温度が設定したしきい値を超えた場合に、担当者へ通知する仕組みを組み込みます。通知を受け取った担当者が、確認した結果と対応内容を記録に残す運用にしておくと、異常が起きたときの対応履歴が、監査資料の一部としてそのまま使えます。
既存の記録をどう引き継ぐか
自動記録に切り替える際、過去の手書き台帳をすべてシステムに入力し直す必要はありません。切り替えた時点から自動記録を開始し、過去の台帳は原本として別に保管しておけば、監査では「いつから自動記録に切り替えたか」を説明できれば足りる場合が多くあります。過去の台帳は、後述の保存期間を満たすまで原本のまま保管します。
通信が切れたときの扱い
センサーとシステムをつなぐ通信が一時的に切れると、記録が欠ける時間帯ができます。センサー側に一定期間分のデータを保持する機能を持たせ、通信が復旧した時点でまとめて送信する仕組みにしておくと、通信障害による記録の欠落を防げます。通信が切れていた時間帯があったことも、資料に記録として残しておくと、提出先からの質問に答えやすくなります。
既存の冷蔵庫・冷凍庫にセンサーを追加する場合の制約
新しく設備を導入するのではなく、既存の冷蔵庫・冷凍庫にセンサーを後付けする場合は、設備の構造上センサーを取り付けられる位置に制約が出ることがあります。扉の開閉部や配管の近くにしか設置できない場合、庫内中央の温度との差を別途確認し、しきい値の設定にその差を反映させる必要があります。
既存設備の電源容量や通信環境がセンサー機器の要件を満たしているかも、導入前に確認します。満たしていない場合は、電源の増設や通信機器の追加が必要になり、導入費用に影響します。
複数拠点に展開するときの注意点
1つの冷蔵庫・冷凍庫で自動記録の仕組みを確認できたら、他の拠点に展開する検討に入ります。拠点ごとに庫内のレイアウトや扉の開閉頻度が異なるため、最初の拠点で決めたセンサーの設置位置や異常判定のしきい値を、そのまま他拠点に当てはめられるとは限りません。拠点を追加するたびに、庫内の温度差を実測してから設置位置としきい値を調整する工程を、展開の計画に組み込んでおきます。
複数拠点のデータを一つの管理画面でまとめて確認できるようにしておくと、拠点間の記録状況の違いにも気づきやすくなります。拠点が増えるほど、通信環境の違いによる記録の欠落リスクも拠点ごとに確認が必要になります。
記録データの保管先をどう選ぶか
自動記録したデータをどこに保管するかも、仕組みを作る前に決めておきます。クラウドで保管する場合は、拠点が増えても一元管理しやすく、社外からも資料を確認しやすい一方、通信環境に保管が依存します。庫内のシステムに直接保管する場合は、通信が切れても記録自体は残りますが、拠点間でデータをまとめて確認する際に別途連携が必要になります。
どちらを選ぶ場合でも、保管したデータを誰が削除・変更できるかという権限の設計は必須です。監査資料として使うデータは、担当者が誤って上書き・削除できない設定にしておくと、記録の信頼性を保てます。
保管期間は、扱う食品の賞味期限から決めます(決め方は次の章で示します)。あとから保存期間を延ばす必要が出た場合、延長前のデータが既に削除されていると、欠落した期間の記録を取り戻す手段がありません。
HACCPに沿った温度記録に必要な項目

2021年6月から、原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が完全施行されています。食品衛生法施行規則は、食品の貯蔵・運搬のみを行う営業者について計画作成と記録を「必要に応じて」に緩めていますが、食品の冷凍・冷蔵業はこの緩和の対象外です。冷蔵・冷凍の倉庫では、温度の記録は残す前提で設計します。
施行規則が示すHACCPの手順のうち、温度ログの自動化に直結するのは次の4つです。
| HACCPの手順 | 施行規則の要求 | 自動記録で残す項目 |
|---|---|---|
| 管理基準の設定 | 危害要因を許容できる水準に抑えるための基準を決める | 庫ごとの上限・下限温度(自社の衛生管理計画で定めた値) |
| モニタリング | 連続的または相当な頻度で実施状況を把握する | 庫ごと・センサーごとの測定日時と温度 |
| 改善措置 | 基準を逸脱した場合の措置を決めておく | 逸脱の開始・終了時刻、通知先、確認者、とった措置、対象ロットの扱い |
| 検証と記録 | 措置の効果を定期的に検証し、書面と実施記録を作成する | センサーの校正日と誤差、月次の逸脱件数の振り返り、確認者 |
厚生労働省の食品等事業者の記録の作成及び保存については、保管業者が作成・保存に努める記録として、品名、所有者の名称と所在地、受入年月日、受渡年月日、保管量に加えて、保管時に確認した状態(温度等)を挙げています。温度ログは、どの荷主のどの品がその庫にあった時間帯の記録かを結び付けておくと、取引先への説明にそのまま使えます。
保存期間について、施行規則は「取り扱う食品が使用され、又は消費されるまでの期間を踏まえ、合理的に設定すること」としています。上記の厚生労働省の記録指針は、流通実態(消費期限・賞味期限)に応じた設定を基本とし、設定が難しい場合の目安として、流通段階では販売後1〜3年を示しています。冷凍品は賞味期限が長いため、PTは冷凍庫の温度ログを3年保存できる容量で設計します。
あわせて読みたい記事として、「食品の賞味期限・ロット管理を、現場のタブレット運用だけで回す方法」と「生成AIで日報と問い合わせを読み、現場の異常を早く拾う仕組み」も参考にしてください。
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温度記録の運用を整理し、どこまで自動化するかを決めたい場合は、PT DISCOVERY(10万円〜、税込11万円〜)で現状の記録方法と課題を整理できます。1つの冷蔵庫・冷凍庫を対象に、センサーからの記録と資料出力までを簡易実装で確認したい場合は、PT WORKS(30万円〜、税込33万円〜)が入口になります。複数拠点や既存の温度管理システムとの連携を含む場合は、PT BUILDで個別見積になります。概算見積から、自社の拠点数や温度帯の条件を入力して金額の目安を確認してください。
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