モール3つの在庫連携、API開発か既製ツール利用かを決める判断基準
この記事の目次(9項目)
Amazon・楽天・Yahoo!ショッピングなど複数モールに出店していると、在庫数のズレや二重販売が起きやすくなります。この問題への対応は、API開発で自社専用に組む方法と、既製の連携ツールを利用する方法の2つに大きく分かれます。この記事では、どちらが向いているかを決める判断基準を整理し、開発発注を検討する場合の費用の考え方、将来モールを追加する場合の注意点も解説します。
モール3つの在庫連携で起きている問題
モールごとに在庫を別管理していると、片方のモールで売れた分がもう片方の在庫に反映されるまでに時間差が生まれ、売り切れている商品が別のモールでは購入可能な状態のまま残ります。これが二重販売につながり、キャンセル対応や取引先への連絡という追加の作業を生みます。更新の時間差を縮めることが、この問題への対応の中心になります。
例えば、在庫の反映を1日1回の手動更新で行っているとすると、更新直前の時間帯に売れた分は最大で約24時間、他モールの在庫数に反映されないままになります(仮の例です)。この時間差の間に注文が重なるほど、二重販売の件数は増えます。更新頻度をどこまで上げる必要があるかは、1日あたりの注文件数と在庫の残数によって変わります。
API開発で組む場合にできること
各モールが提供するAPIを使って自社専用に連携を組むと、更新頻度やエラー処理を自社の業務に合わせて設計できます。例えば、ある商品だけ更新頻度を上げる、エラーが出た場合に特定の担当者へ通知する、といった細かい調整が可能です。一方で、モールごとにAPIの仕様が異なり、仕様変更への追従や、障害発生時の対応を誰が担うかを決めておく必要があります。保守できる体制が社内にない場合、開発した連携が時間とともに使われなくなるリスクがあります。
保守体制を社内に置けない場合は、開発を発注した相手に保守・運用まで継続して依頼できるかどうかを、発注前に確認しておく必要があります。開発だけを請け負い、保守は対応外という場合、API仕様が変わったときに自社で対応する担当者を別途確保しなければなりません。
既製ツールで済ませる場合にできること
既製の連携ツールを利用する場合、対応しているモールの範囲内であれば、短期間で在庫連携を始められます。月額の利用料が発生しますが、API仕様の変更への対応はツールの提供側が行うため、社内で保守する負担は小さくなります。制約としては、自社独自の商品項目やセット商品の扱いなど、ツールが対応していない運用には合わせにくい場合がある点です。
導入前には、利用を検討しているツールが自社の取扱商品数や更新頻度の要件を満たすかを、資料や問い合わせで確認しておく必要があります。対応モールの一覧に入っていても、更新頻度や項目数に制限がある場合があるため、契約前に自社の運用条件を具体的に伝えて確認することをPTは勧めます。
判断基準の整理

どちらが向いているかは、以下の項目を自社の状況に当てはめて判断します。1つの項目だけでなく、複数の項目を組み合わせて見たときにどちらの傾向が強いかで判断するほうが、実際の運用に合った結果になります。
| 判断項目 | API開発が向く場合 | 既製ツールが向く場合 |
|---|---|---|
| 商品数・SKU数 | 多く、モールごとに細かい調整が必要 | 既製ツールの対応範囲で収まる規模 |
| モールごとの特殊項目 | セット商品、バリエーションなど独自の扱いが多い | 標準的な単品管理が中心 |
| 更新頻度の要件 | 数分単位など高頻度な反映が必要 | 既製ツールの更新頻度で足りる |
| 社内の保守体制 | API仕様変更に対応できる担当者・外注先がいる | 社内に保守担当を置けない |
| 将来の拡張予定 | 自社の基幹システムと合わせて拡張していく予定がある | 当面はモール出店の範囲で運用する |
費用の目安の考え方
API開発を外部に発注する場合、PT BUILDのシステム連携における目安幅は、小規模で20万円〜50万円、中規模で50万円〜150万円、大規模で150万円〜400万円です(税別、仮置きの目安であり実績値ではありません)。モール数、商品数、エラー処理の細かさによって規模が変わります。既製ツールを利用する場合は、開発費の代わりに月額の利用料が継続して発生するため、どちらが総額で合うかは利用期間を踏まえて比較する必要があります。
併用という選択肢

API開発と既製ツールは、どちらか一方だけを選ぶ必要はありません。例えば主力モールの在庫は既製ツールで標準的な更新を行い、セット商品や独自項目を持つ一部の商品だけをAPI開発で個別対応する、という併用の形もあります(仮の例です)。すべてを自社専用に組むと保守負担が大きくなり、すべてを既製ツールに頼ると独自の運用に対応できない商品が残ります。商品のうちどの範囲が標準的な管理で済み、どの範囲が独自対応を必要としているかを棚分けしてから、API開発と既製ツールの範囲を決める進め方も検討に値します。
発注時に確認しておきたい質問
API開発と既製ツールのどちらを選ぶ場合でも、契約前に確認しておくべき点があります。外部に開発を発注する場合、以下を発注前に確認しておくと、発注後の認識のズレを防げます。
- 保守・運用は発注後も同じ相手が担うのか、別の相手に引き継ぐのか
- モールのAPI仕様が変更された場合、追従作業は誰が行い、費用はどうなるのか
- 連携が止まった場合の検知方法と、連絡を受ける担当者は誰か
- 将来モールを追加する場合、どの程度の追加費用・期間がかかるのか
- 連携対象の商品数やSKU数が増えた場合、追加費用が発生する条件はどこにあるのか
- 検収のタイミングと、不具合が見つかった場合の修正対応は契約のどこに含まれるのか
モールを追加する場合の考え方
モール3つで運用している連携を、さらに別のモールへ広げる場合、既製ツールであれば対応モールの範囲内かどうかの確認だけで済むことが多く、追加の手間は比較的小さく収まります。API開発で組んでいる場合は、追加するモールのAPI仕様を新たに調査し、既存の連携ロジックに組み込む作業が発生するため、モールを追加するたびに一定の開発期間と費用がかかります。将来的に取り扱うモールを増やす計画がある場合は、現時点でどちらを選ぶかだけでなく、モールを追加する際の手間も含めて比較しておくと、後から選び直す手戻りを避けられます。
あわせて読みたい記事として、「在庫差異の原因をAIに探らせる前に、現場でそろえておくべきデータ項目」と「開発の見積額に幅が出る理由。要件のどこで工数が膨らむか」も参考にしてください。
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